「お前のような地味な文書係、侯爵家の格に釣り合わん」——夜会で婚約破棄を告げられた法伯爵令嬢ユスティーナは、泣かずに静かに微笑んだ。「承知しました。では——第十七条を、ご確認ください」。
その婚約契約書を起草したのは、彼女自身。違約金十万ターレルと銀鉱山の担保が、署名どおり粛々と執行されていく。慌てた元婚約者家は偽造文書で抗うが、印章の押し目ひとつで真贋を見抜く彼女の目は、誤魔化せない。やがて偽造の糸をたどった先に、十年前に父を陥れた「公証院の闇」が浮かび上がり——。
冷徹と噂の執行官大公に、腕前ごと溺愛される、爽快☆条文ざまぁ。剣も魔法もいりません。武器は、署名と封蝋の残る一枚の紙。契約は、涙より正直です。
※本作は転生・チートなし。ヒロインの力は「父仕込みの家伝」です。