目が覚めると、俺は王太子だった。
聖女の婚約者を捨て、偽りの愛に溺れ、国を傾けた末にざまぁされる悪役王太子。
このままでは破滅する。
だが原作を下手に変えれば、もっと大きな災厄を招くかもしれない。
だから俺は、死なない破滅を選ぶことにした。
嫌われるために優しくし、騙されるために近づき、愚かな王太子を演じる。
聖女の婚約者は突き放し、俺を破滅へ導く男爵令嬢には原作通り近づいていく。
すべては悪役として破滅するため。
――だったはずなのに。
婚約者は俺の冷たさを愛だと勘違いし、重い感情を向けてくる。
男爵令嬢は欲望を見せない俺に調子を狂わせ、周囲は俺を有能な王太子だと深読みする。
俺は悪役になりたいだけなのに、物語は少しずつ原作からズレ始めていた。