「氷の薔薇」と呼ばれる完璧な公爵令嬢レオノーラ。
だが彼女が断罪の場で怒りに震えていた理由は、婚約破棄でも追放でもない。
目の前の祝杯…ビールが、温かったからだ。
「温い。愛も、この泡も」
その瞬間、王宮の酒文化は死んだ。
社交界を去った彼女は、下町の潰れかけた酒場を乗っ取り、公爵令嬢の嗜み(氷魔法)をすべて「樽の冷却」に注ぎ込む。
完璧な温度。
完璧な泡。
完璧な喉越し。
彼女の一杯は、男たちの魂を洗い流した。
「ホップの苦味は、すべての汚れを落とすのですわ」
その黄金の衝撃に、堅物騎士団長は跪き、軍部は密かに常連と化す。
一方、彼女を追放した王太子は気づく。
王宮の酒が、すべて泥水に変わってしまったことに。
喉が乾く。
だが、もう戻れない。
これは、高貴で狂気なビールに捧げた悪役令嬢が、
王国を喉越しから支配していく、爽快すぎる麦酒革命譚。