世界は、百の階層からできている。
第100階層が世界の底。
第1階層が世界の頂。
そして第1階層のさらに先には、誰も見たことのない「地上」があるという。
生まれた階層から出ることなく、そこで一生を終える。
それが、この世界の常識だった。
第100階層で生まれ育った青年レンも、本来ならその一人だった。
けれど彼には、幼い頃から抱き続けてきた夢がある。
――地上を見てみたい。
亡き母から聞かされた、どこまでも続く青い空。
夜空に輝く無数の星。
果ての見えない海。
そのすべてを自分の目で確かめるため、レンは第100階層を旅立った。
ところが、辿り着いた第99階層で、レンはありえないものを発見する。
そこには、第100階層から出たことがないはずの母の痕跡が残されていた。
なぜ母の名前がここにある?
疑問を抱きながら第98、第97、第96階層へと進むレン。
未来を見る異能を持つ少女。
迫害される獣人。
故郷を失った魔族。
旅の中で仲間を増やし、母の残した足跡を追ううちに、レンはこの世界の奇妙な矛盾に気づいていく。
上へ行くほど豊かになる世界。
上へ行くほど発達する文明。
それなのに――
なぜか上へ行くほど、「第100階層」を知る者が減っていく。
やがて第50階層へ辿り着いたレンは、世界の秘密を知る古代種の老人と出会う。
「俺は第100階層からここまで上ってきた。母さんも、この先へ行ったんだろ?」
そう尋ねるレンに、老人は告げた。
「異邦人よ――お前は、上ってなどいない」
これは世界の底から地上を目指す青年が、
亡き母の足跡を追い、
百階層に隠された真実へと辿り着く物語。