追放された悪役令嬢が森で拾ったのは、銀色の狼だった。
前脚を怪我していた。放っておけなかった。前世は動物病院の看護師——こういうのは得意なのだ。
手当てして、小屋に連れ帰って、「ルーク」と名前をつけた。
異様に賢い。お手もお座りもできる。毛並みは最高。もふもふ度が高すぎて一日中撫でていられる。枝を投げたら全力で取りに行く。かわいい。
——満月の夜、ルークが人になった。
銀髪のイケメンだった。
「あ、あの……服を——」
裸だった。
狼族の青年。人の姿になれるのは満月の夜だけ。朝になるとまた狼に戻る。
昼はもふもふの甘えん坊。お腹を見せて撫でろとせがんでくる。
夜はイケメンなのに不器用で無口。肩一つぶんの距離を縮めるのに一分かかる。
翌朝、また狼に戻って私の胸の上で寝ている。
——昨夜あんなにかっこよかったのに、今しっぽ振ってるの、ずるくない?
しかも狼族の兄が「弟を返せ」と乗り込んでくるし、隣の薬師は「あら、またイケメンになったの?」と笑ってるし、子狼のピートまで懐いてくるし。
もふもふとイケメンに囲まれた辺境生活、心臓がもたない。
【第二章・満月の結婚式編】求婚は、玄関先の鹿一頭から始まりました。狼の式と人間の式、ふたつの結婚式へ。毎日更新。