「華がない。そんなに針仕事がお好きなら、いっそ針子にでもなればいい」——婚約破棄の夜、公衆の面前で嘲笑された伯爵令嬢リディアは、本当に王宮衣装室の針子になった。ただし新品を縫わせてはもらえない、最下層の「お直し係」。
けれど祖母仕込みの針は、破れたドレスも、着る人の隠しごとも、静かに直していく。急な謁見、破れた式典外套、消えた生地の謎。直した一着ごとに、王宮のどこかで囁きが増えていく——「見事な仕立てね。誰の手?」
「冷徹の吝嗇卿」と噂される式典局長だけが、誰より先にその針の値打ちに気づいていた。
これは、捨てられた令嬢が、捨てられるはずだった物たちと一緒に、自分の居場所を縫い直していく物語。虚飾を着た人たちの化けの皮は、勝手に綻びていきます。
派手な復讐より、静かにじんわり報われる話が好きな方へ。