紀元前2世紀初頭。
「アレクサンドロス大王の後継者(ディアドコイ)」戦争で、セレウコス朝シリアとの戦に敗れたプトレマイオス朝エジプトは、戦費から来る重税とマケドニア人支配への不満から空前絶後の大反乱に揺れていた。
幼いファラオ、プトレマイオス5世の下、国政は宰相を巡る権力闘争で麻痺し、首都アレキサンドリア以外の地は反乱軍の手に落ちる。
この国難に立ち上がったのは、医者の道を断念したコマンオスであった。
彼は意図しない運命に翻弄されつつも、冷徹な現実主義の知性を駆使して、やがて軍事の全権を託される。
コマンオスによる上ナイル地方の鎮圧と、ロゼッタ・ストーンに刻まれるプトレマイオス朝の転換期の物語。
これは、「医者になれなかった男」が、内憂外患のエジプト国家再建を成し遂げた戦記である。