あまり売れることはなかったが極一部のマニアが熱狂的になった乙女ゲームがあった。
まず主人公をショタ系男子か可憐な女子か選べ、攻略対象者は王子に王女に騎士の卵に神官候補に貴族令嬢子息に将来有望な有能実力者と性別を選ばず幅広く共通で、カップリングは王道カップルからBL百合と何でもあり。
その上カップリングに対するエンディングは、バッドエンドからお友達エンドや駆け落ちエンドにトゥルーエンドと多彩だったので、当然そのパターンの多さからストーリーの数も多く全部をコンプリートするのは至難の業と言えたのもこのゲームの不人気の理由となっていた。
しかし私はその至難の業と言われた全ストーリーを攻略した。
すべてのスチルを手に入れ、ゲームの隅から隅まで確認し、ゲームでは描かれなかったサブストーリーまでも妄想で埋めていった。
どうして私がそこまでできたかというと私の推しはストーリー上では名前もないただの文官様だったから。彼が次にいつどこで登場するのか確認せずにはいられなかったのだ。
そしてなぜ私がそんな乙女ゲームのことを今さら思い出しているかと言えば、どうやら私はその乙女ゲームの世界に転生しているようだと気付いたからだった。