誰にも望まれず、弱さを抱えたまま生きてきた男は、
二十七歳の誕生日に、静かにその人生を終えた。
彼が次に目を覚ましたとき、剣と魔法の異世界に転生していた。
しかしそこは、弱者が救われる場所ではなく、
物語のように楽しい世界でもなかった。
「やらなければ、やられる」弱肉強食の世界だ。
転生してから出会い、愛した二人を失い、
「救えなかった」という後悔だけが、
彼を生かし続けていた。
もう誰も救えないと知っている彼が出会ったのは、
強いふりをして、壊れながら戦争を続ける女性の魔王。
彼女を救えないと分かっていながら、
それでも隣に立つことだけは選んだ。
これは、誰かを救う物語ではない。
生きてしまった人間が、
それでも生き方を選び直そうとする物語。