目が覚めると、俺は平成十二年の春、小学四年生に戻っていた。
スマホはなく、放課後の約束は口約束。
母さんの朝ごはんがあって、ランドセルは思っていたより重い。
もう戻れないはずだったあの頃の普通が、そこにあった。
一周目の人生は、大きく失敗したわけじゃない。
ただ、勉強も、友達も、恋愛も、お金のことも、どこか適当に流してしまった。
もっとちゃんとやっておけばよかった。
そんな普通の後悔だけが残っていた。
未来のことは少しだけ知っている。
そして平成十二年には、ロト6があった。
父さんが昔、「惜しかった」と笑っていた六つの数字。
それをもう一度選んだ結果、俺は一等四億円を当ててしまう。
でも、四億円があっても俺は小学四年生だった。
通帳は父さんと母さんが預かるし、学校では宿題もある。
友達にも先生にも言えない。
それでも、買えなかったゲームを買い、家族で旅行へ行く。
覚えている会社の名前をノートに書き、父さんと少しずつ株の話もする。
小さな選択が、前の人生では届かなかった場所へつながっていく。
未来知識があっても、青春は思い通りにならない。
戻れないはずだったあの頃から、人生をもう一度やり直す物語。