現代ダンジョンにフードデリバリーする最強おじさんの話。
勇者パーティが前人未踏のダンジョン最深部で魔王と対決中にデリバリーに来た謎のおじさん。四人パーティが何日もかけて死に物狂いでようやく到達したところに一人でやってきてアイテム届けて普通に帰っていく。
☆
日本各地にダンジョンが出現し、十年。
異界に通じる『筒《チューブ》』=ダンジョンは夢の採掘場となった。
しかしそこには魔物と、猛毒の『魔素《マナ》』に満ちており、人間は三分もたずに死亡する。
魔素に適応するため、人間は魔物の使う『魔術』を解明。これを変身に用いた。
『変奏体』――『ヴァリアブル・エフェクター = Variable
effector.』
通称『V』。
変奏体《V》となって、ダンジョンを攻略する者《チューバ―》を、『VTuber《ブイチューバー》』と呼ぶ。
それと全く無関係に、とある企業がスタートさせたフードデリバリー事業が『チューバーイーツ』という。
さらにそれらとは一切無関係に、ここにひとりのおじさんがいる。
そんじょそこらのおじさんではない。
17歳から37歳までの20年間の職歴が皆無のおじさんである。
しかしその実態は――。
「旦那ァ! なんで俺ァスクーターなんすか!?」
「飛竜が町中を飛んでたらみんながびっくりするじゃない」
「だからって原付二種はねぇでしょうがよ!」
「一番ちょうどいいんだよ税金も安いし」
「税金かかってるんスか俺!?」
異世界を平和に導いて日本に帰還した、元英雄のおじさんであった。
その強さと秘密を求めて、やたらモテまくりなおじさん。最強魔道士VTuber、ブラウスぱつぱつ公安刑事、低身長爆乳V個人勢――。
しかしおじさんはなびかない。異世界で死別した妻を、今も愛しているので。
その奥さんがまさか現代日本に転生しているなんて思いもせず、おじさんは今日も原付を走らせる。
『熱々の幸せを、今すぐお届け!』
それがチューバーイーツの、そしておじさんの理念だから。
※カクヨムにも掲載しています。