リリアは、春が嫌いだった。
百年ぶりの春を呼ぶたび、命が削られるからだ。
花が散れば、大切な記憶まで失われる。
人々は彼女を、奇跡の姫と呼ぶ。
けれど王宮が見ているのは、春を咲かせる力だけだ
リリアは、死への恐怖を誰にも言えずにいた。
そんな夜、千年桜の根元に青年が落ちてくる。
異世界から来た彼の名は、神谷春人。
彼に触れた瞬間、千年桜が一斉に満開になる。
春人は彼女を、姫ではなく一人の少女として見る
優しさに心が動くほど、桜は花びらを散らす。
恋をするほど、彼を忘れる日は近づいていく。
生きたいと願うことは、国を見捨てることなのか。
愛することは、忘却を早めるだけなのか。
彼女は、忘れると知りながら、その手を取れるのか。