没落貴族の令嬢であるエルは、親友同士であった前国王と父方の祖父母の縁で、第3王子であるアランとは許嫁の関係にあった。早くに両親を亡くしたエルは、気の合わない叔父のもと、家政婦のような扱いで暮らしていた。
幼いころは病弱で体も小さく、周囲から未来を期待されていなかったアランであったが、彼が成長するにつれて体が丈夫で眉目秀麗な青年となったために、貴族たちは婚約者であるエルのことを煩わしく思うようになる。
この婚約のせいで周囲からは身の程知らずだと後ろ指を指され、社交界でも肩身の狭い思いをするエル。一方アランは、そんな周囲の意見には流されず、他の令嬢との婚姻を勧められても一切首を縦には振らず、エルのことをあいも変わらず溺愛するばかり。
エルは、なんとかアランの気を自分から変えられないか画策するものの、アランは全く心変わりをする気配がなく、それどころか、エルがマリッジブルーなのだと思いこむと、自分が16歳になる月にエルと結婚する準備を進めだしてしまう。
気の進まない結婚を控えたエルは、結婚前に亡き母の生家へいくことになる。旅の道中でとある街の宿に泊まったエルだったが、彼女が部屋で眠りについた後、その宿で不審火が発生する。
間一髪のところで助けてくれた見知らぬ男性に、この火事がエルを殺すために仕組まれたものだと示唆されると、エルは家には戻らずに国境近くの港町に逃げ込んだ。
たどり着いた町で身分を隠して平民となり、エリィと名を変えたエルは、貧しく辛く、しかし幸福な生活を3年ほど送った。
ある日、エルの住む町に王国軍が遠征にやってきた。そこで再会したのは、かつての面影をなくしたアランだった。