訳あり侯爵令嬢ネリネは、新米伯爵ノアの元に嫁ぐことになった。
顔合わせの日、ノアは、ネリネを前に神妙な顔で言った。
「――俺は、君を愛することができない」と。
しかし伯爵夫人としての地位はしっかり保証することを告げられたネリネは首を傾げた。
「それは、乳母のペットの亀くらいに愛されているのでは?」と。
天才的な閃きにより、(この人、他に恋人がいるんだ! そういうの本で読んだ!)と自信満々に察したネリネは、ノアに配慮すべく伯爵夫人部屋でトドとして暮らすことに決める。
……ノアは別にネリネのことを、一度もトドとは呼ばないが。
こうして『かつて古代遺物を拾い食いしたせいで太陽光や海水を浴びると髪が発光する秘密を抱えた自認トド』と『自称君を愛することができない男』の、円満だと信じ込んだすれ違い同居生活は始まった。
※本作には、性に関するデリケートな内容、生物の繁殖に関するネタ、夫婦関係を巡る率直な描写などが含まれます。
直接的な性描写はありませんが、苦手な方はご注意ください。