「ようこそおいでくださいました、聖女カリン様」「え、私カリンじゃなくてカレンですけど……」そんなカレンの言葉に、集まっていた人々が静まり返る。
高校生のカレンは、なぜか突然謎の世界にいた。そして、不思議な装束の人々に囲まれていた。人々は彼女のことを聖女だと思っているようだったが、それはただの人違いだったのだ。
手違いで呼ばれた、聖女ではない存在。しかしカレンには、悲壮感のかけらもなかった。彼女は自分が異世界に召喚されたとはつゆほども思っておらず、自分は夢を見ているのだと、そう思っていたのだ。
ひとまず彼女は、元の世界に戻る方法を探す旅に出ることにした。そうしていれば、いずれ夢から覚めるだろう。彼女は、そう気楽に考えていたのだった。
ところが旅に出てすぐに、カレンは盗賊に襲われてしまう。腕は立つが無愛想な護衛のシェスターのおかげで難を逃れるが、その際に彼女は魔法――聖女のみが行使できる力――に目覚めてしまう。
予想外の事態にとまどいながら、カレンとシェスターは旅を続けた。魔法については、ひとまずひた隠しにして。
しかしある事件をきっかけにして、カレンは自分の置かれた状況に、そして魔法にまっすぐ向き合うことを決めたのだった。
そうして、聖女ではない普通の少女と訳あり護衛の、どうにも奇妙な世直しの旅が始まったのだった。