黒髪と紫水晶の瞳を持つ気弱そうな美青年がおずおずと右手を差し出した瞬間、エミール・セルジョンは思い出した。多様な階層の人間が集う王立学園へ入学するその日、目の前に立つ学生寮のルームメイトが、乙女ゲームの攻略対象キャラでなおかつヒロインに執着していくヤンデレキャラだったことを──。
ゲームに登場すらしないモブキャラだった筈のエミール。しかし前世の記憶と共に偶々知っていたこの世界の情報を思い出した今、危険すぎるルームメイトと適度に距離を取り、バッドエンドと十分にあり得る己の死を回避するべく奮闘する……筈だったのだが……?