世界中に突然現れた謎の巨大構造物――「ダンジョン」。
モンスターの流出被害を受け、各国政府は成人した全国民に「適性検査」を義務付けた。
ごく普通の会社員・井上達也(25)もまた、近郊のダンジョンで適性検査を受けることになる。
派手な魔法も使えず、剣術も素人。渡された鉄の棒でスライムを倒しても何の能力もつかない。
諦めかけた達也が、手持ち無沙汰に足元の雑草を引っこ抜いたその瞬間――
『能力を付与します――属性・土。特性・植物親和』
「いや……草、引っこ抜いただけなんだけどな」
攻略本もデータベースもない時代。
目立たないよう無難な「トマト」のアバターをかぶり、100均のノートに未知の植物を地道に記録し始める達也。
配信画面の向こうでいつしか『トマトの人』と呼ばれるようになった彼は、まだ知らない。
その一冊の観察日記が、のちのダンジョンデータベースへと繋がっていくことを――。
これは、一冊の泥くさい採取ノートと一振りのナイフから始まる物語。
※本作は、ストーリーの進行や設定の追加に伴い、整合性を保つため過去のエピソードを一部修正・加筆する場合があります。あらかじめご了承ください。