え? 推し活って、推しの死亡フラグを国家改造でへし折ることじゃなかったの?
幕末やりこみゲームで、小栗上野介忠順にどっぷり沼っていた二十九歳の女、塩原絹乃。
「小栗様は私を好きでなくてもいい! 私の名前なんか覚えてなくていい! その代わり七十まで働け! ガシガシ働けぃ!」
そんな彼女が目を覚ました先は、ゲーム開始前の上州・田口村。
しかも養蚕農家の幼女になっていた。
「おお、最高じゃね。小栗様の幼体に会える!」
――と思ったのもつかの間。
現実の幕末は、ゲームほど甘くなかった。
養蚕チート?
蚕なんて触ったこともない。
現代知識?
知っているだけでは何の役にも立たない。
定番の転生チートを次々と失敗しながら、それでも絹乃は諦めない。
我には科学の神様がついている。
技術も知識も、人の力も、使えるものは全部使えばいい。
ところが、小栗様のもとへたどり着くより先に立ちはだかったのは、天保の大飢饉だった。
飢え、冷害、洪水、病。
未来知識だけでは、人は救えない。
それでも絹乃の周りには、いつしか農民、職人、商人、そして妙に頼もしい仲間たちが集まり始める。
村を救う。
養蚕を変える。
金を回す。
災害に備える。
そしていつか、幕末そのものを変えてみせる。
すべては推し、小栗上野介を権田村で死なせないため。
「必ずや小栗様に、生涯現役で仕事ずくめの人生をプレゼントして差しあげるんだ」
これは、推しというものを盛大に勘違いした転生幼女が、
推しの死亡フラグをへし折るため、いつの間にか村と国まで作り変えていく物語。
第一部・田口編。
なお、まだ小栗様には会えません。がっくし。