王国最強と謳われた宮廷魔導師、エリアス・レインフォード。
十八歳という異例の若さで宮廷魔導師となり、数々の功績を残してきた彼は、二十四歳にして長期休暇を願い出た。
理由は、ただひとつ。
「一度くらい、普通の暮らしをしてみたいと思いまして」
向かった先は、王都から遠く離れた辺境の街フィオーレ。
美しい街並みに、温かな人々。
美味しい料理と、穏やかに流れる時間。
そこで静かに暮らすはずだったのだが――。
壊れた魔道具を何気なく修理すれば、職人たちが驚愕し。
困っている人を助ければ、いつの間にか大騒ぎになり。
ただの散歩のつもりで森に入れば、古代の精霊に懐かれてしまう。
本人は至って真面目で、どこか天然。
自分がどれほど規格外なのか、いまいち理解していない。
そんなエリアスの周囲には、世話焼きな冒険者や気さくな宿屋の青年、訳ありの古書店主など、個性豊かな人々が少しずつ集まっていく。
これは、平穏を望む一人の宮廷魔導師が、さまざまな出会いと小さな冒険を重ねながら、自分だけの居場所を見つけていく物語。
――もっとも、彼の望む「普通の暮らし」が、本当に普通であるかどうかは、また別の話なのだけれど。