「ブレア、なんで俺と婚約破棄したんだ!?」
「そもそもあなたとは婚約していませんけど」
大商家レイバン商会の令嬢ブレアは、縁談を断っただけの相手から、なぜか勝手に「婚約破棄された」と吹聴されていた。
そのうえ次々と望まない縁談まで持ち込まれ、平穏に仕事をしたいブレアはうんざりしていた。
一方、友人である堅物騎士オーウェンもまた、我儘な第二王女から執拗に求婚され、仕事に支障が出て困り果てていた。
そこでブレアは提案する。
「結婚しましょう。そうしたら全部解決です」
こうして始まった、利害一致の契約結婚。
厄介事を遠ざけ、仕事に集中するための結婚――のはずだったのに、ある場を収めるためにブレアが放った発言がきっかけで、二人は社交界一の溺愛夫婦を演じる羽目になってしまう。
恋愛経験ゼロ、真面目すぎる二人は、甘い視線も愛の囁きもすべて手探り。
「私たちは人前では溺愛し合う夫婦です。
オーウェン、甘い微笑みをお願いします」
「……わ、分かった」
そうして溺愛夫婦を演じながら、降りかかる嫌がらせもトラブルも、ブレアの商才とオーウェンの実務能力で力を合わせて解決していく。
これは、仕事のために契約結婚した敏腕商人令嬢と堅物騎士が、無自覚なまま本物の夫婦になっていく物語。
……ただし当の本人たちだけは、演技をしていない時のほうが、ずっと甘いことにまだ気づいていない。