帰る方法は、誰も知らなかった。
アメリカの博物館で爆発に巻き込まれた大学生のリオとクララ。目覚めたのは、言葉も通じない異世界の森だった。リオの手には、展示ケースにあったはずの、梅の花を刻んだ古い鍔が握られていた。
故郷へ帰る手がかりを求め、二人は街へ出る。
リオは荷を運び、剣を学ぶ。クララは知識を仕事に変え、精霊に願いを届ける霊唱術を学ぶ。別々の道を歩きながら、二人はこの世界で暮らす足場を築いていく。
やがてリオが出会ったのは、百五十年前にこの世界へ渡った薩摩の剣士、南雲伊織。彼は、リオの持つ鍔に見覚えがあった。
一方、学院では、クララに心を寄せる少女の孤独に、得体の知れない声が忍び寄っていた。
故郷に残した家族。この世界で出会った人々。
帰りたいと願う二人は、ここにも失いたくないものを見つけていく。