「アム――」
幼い頃から、ずっと一緒だった。
戦災孤児の少年アムルと、銀髪の少女エル。
家族のように育ち、いつしか互いを誰よりも大切に思うようになった二人。
二人が望んでいたのは、ただ一緒にいること。
だが、戦争はそんなささやかな願いさえ許さなかった。
アムルは故郷を守るために剣を取り、エルは敵国の将として戦場に立つ。
そして二人は、ついに敵味方として向かい合うことになる。
なぜ、彼女は敵になったのか。
なぜ、彼は愛する少女と戦わなければならないのか。
戦場で再会したエルは、かつての彼女とは違っていた。
皮肉なことに、二人には戦争の才能があった。
アムルとエルは幾多の戦場で勝利を重ね、名を轟かせていく。
しかし、その才能こそが二人を戦場へと縛りつけていく。
戦争が二人に与えたのは栄光だけではない。数え切れないほどの犠牲と、決して消えることのない傷もまた与えられたものだった。
そして、これは二人だけの物語ではない。
出世と金を求め、都市同盟の官僚となったジャン=ワイズマン。
罪人としてすべてを失いながら、帝国の頂点へと歩み始めるルートビッヒ=シュナイダー。
戦争によって人生を狂わされ、それでも懸命に生きようとする無数の人々。
軍事、政治、外交、経済。
陰謀と裏切り、友情と愛。
それぞれの野心と願いが交錯し、大陸の歴史を動かしていく。
誰も、最初から英雄だったわけではない。
誰もが正しい人間だったわけでもない。
傷つき、間違え、大切なものを失いながら、それでも何かを守ろうとする。
そして人は、少しずつ変わっていく。
数世代にわたって繰り返されてきた戦争。
勝利の先には新たな争いが生まれ、昨日の敵が今日の味方となり、誰もが終わりの見えない戦乱に疲れ果てていく。
いったい、何のために戦うのか。
何のために人は殺し合うのか。
そして、この戦争に終わりはあるのか。
銀髪の少女と、彼女を取り戻そうとする青年。
野心に生きる官僚。
罪人から皇帝へと歩む男。
三つの運命が交差するとき、アーネム大陸の歴史が大きく動き始める。
戦争・政治・外交・恋愛を描く、本格群像戦記。
これは、戦争に愛された男と女が、戦争を滅ぼす物語