第三王子エルレッドは、初恋相手であるクレア・アーレイに婚約破棄を言い渡した。
留学先で出会った男爵令嬢レベッカを隣に座らせ、その肩に触れながら「もうクレアのことは愛せない」と告げる。
ショックを受けたクレアは、泣きながら部屋を出ていってしまった。
その背中が遠ざかると、どういうわけか今度はエルレッドが泣き出した。もう号泣だ。
「あー……つらい。クレアを泣かせた……。だれか僕を殺してくれぇええ!」
「婚約破棄するって決めたのはエルレッド殿下でしょ。ほら、初志貫徹!」
そんな側近との会話を、彼女が聞くことはなかった。
一方、帰宅したクレアは唐突な婚約破棄を不思議に思い始める。
半年前までは仲むつまじい二人だったのに、なぜこんなことになってしまったのか。
十二年の婚約期間で培った洞察力を武器に、理由を探ろうとするクレアであったが……。
◇◇◇
婚約破棄をめぐり、王子と婚約者が化かし合う話です。