王妃ラゴウは、赤銅の月の夜に身を投げた。
三年間、王に愛されることなく「同盟の証」として抱かれ続け、
ついには王の口から別の女――聖女カナリアの名を聞いてしまったからだ。
絶望のまま落下したその瞬間。
王妃の身体に、別の魂が入り込む。
目を覚ましたのは、整形外科医・陣内生真(ジンナイ・ショウマ)。
女たらしの遊び人。
妹を助けようとして池に飛び込んだはずの彼は、
なぜか乙女ゲームの世界で、王妃ラゴウの身体に転生していた。
しかもこの世界は、妹が夢中になっていた乙女ゲーム
『聖女の結婚』の物語そのもの。
ゲームの正史では、王アレクシスは戦場で死ぬ。
そしてその死をきっかけに、妹は絶望して自殺未遂を起こした。
つまり――
王を救えば、妹を救える。
ジンナイは決意する。
王と聖女を結びつけ、
王妃である自分は離縁して草原へ帰る。
それが最も平和な結末だ。
……そのはずだった。
だが問題がある。
王は聖女を愛しているくせに、
なぜか王妃を手放そうとしない。
さらに
草原最強の戦士シキ、
王直属騎士ルシアン、
冷酷な宰相メフィスト――
それぞれの思惑が絡み合い、
王宮の均衡は静かに崩れ始める。
王を救えば妹は救える。
だがそのためには――
王妃として、王の運命を書き換えなければならない。
これは
乙女ゲームの破滅ルートに転生した男が、
妹を救うため王を聖女に譲るつもりだったのに、
なぜか王に執着されてしまう物語。
正史なんて、ぶち壊してやる。