十四歳の少年、ゼラ・スヴァルトゥルは、潜影族の生き残りだった。潜影族とは影に潜る能力を持った少数民族のことであり、影に潜ると「裏世界」と呼ばれる何も無い異空間に移動することができる。
八年前、六歳のゼラが目を覚ますと、両親がベッドで死んでいた。外傷は無く、死因は分からない。しかも、集落にいた他の潜影族も全員、両親と同じように死んでいたのである。
その日から天涯孤独となったゼラは、潜影能力を悪用し、人から金を奪って生活するようになった。
ある日、いつものように能力を使い、青年の剣士から金を騙し取ろうとするが、逆に騙されて捕らえられてしまう。剣士は冒険者ギルドに所属しており、ギルドの依頼を受けて悪事を働くゼラを捕まえに来たのだった。
剣士はゼラの能力について尋ね、彼が潜影族の生き残りであることを知る。その過酷な境遇を知った剣士は、悪事を見逃す代わりに条件を出した。冒険者ギルドに所属し、自分とパーティーを組め。そうすればまともな金の稼ぎ方を教えてやる、と。断れば衛兵に引き渡されるため、ゼラは仕方なく条件を呑み、冒険者になる決心をした。そして、青年剣士、アルジェント・ウリングレイとパーティーを組む。
ゼラはギルドに入会し、その日からギルドに出された依頼をこなす日々が始まった。依頼内容はモンスターの駆除や、罪人の捕縛が主である。それらはゼラの潜影能力をもってしても、達成が困難なものばかりだった。
しかし、ゼラは冒険者の最高位、Sランクを目指して奮闘する。アルジェントの話によると、Sランク冒険者ともなれば、王族レベルの収入を得られるという。さらに、貴族からの依頼を受ける機会も増え、彼らと接触することが可能になる。Sランクの職務は、潜影族の事件について情報を集めるのに打ってつけだった。金に目が無いゼラは、一攫千金と事件の原因解明という二つの野望を胸に抱き、過酷な依頼に立ち向かっていく。
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