本物の「神託の乙女」が現れた日、聖女として育てられた私は、争うことも弁明することもなく、聖印を静かにお返しした。役目が終わったなら、身を引くだけ。何かを取り戻すつもりは、もうない。
そうして辿り着いた辺境の古い教会で、私はただ静かに暮らすつもりだった。
――それなのに。
寡黙な領主は黙って薪を置いていき、町の子は私を名前で呼ぶ。放っておいてくれない優しさに、凍えていた心が、少しずつほどけていく。
これは、何も望まなかった元聖女が、じわじわと大切にされてしまう物語。
争わず、奪い返さず。読み終えたあと、少しだけ心がほどける、静かな溺愛譚です。