タメシス市長選挙日でもある聖ミカエル祭の一週間前--
警視庁任命の諮問魔術師エレン・ディグビーの事務所を、毛織物商人組合の長にして現市長のリヴィングストン氏が訪れた。
市長がエレンに秘密厳守で打ち明けるには、エレンと同い年の長女シビル・リヴィングストンの結婚問題に関して脅迫状が届いたのだという。
シビルには八年前、社交界にデビューしたばかりの十八歳のころに、父親に結婚を認めてもらえなかった魔術師の恋人がいたのだという。
脅迫はその恋人アントニオからではないか――
アントニオはもしかして魔術で姿を晦ませて使用人のなかに紛れているかもしれない。
そう訴えられたエレンは、タメシス郊外のリヴィングストン家の別邸「ローレル荘」へと向かいます。