恋を知らない男は、人を好きになる順番も知らない。
朝比奈玲、二十八歳。
東央グループ本社・経営企画室長。
名家の分家に生まれ、仕事は完璧。
容姿端麗で、異性関係に困ったこともない。
誰もが認める完璧な男。
ただ一つ。
――恋だけは知らなかった。
箱根の高級旅館で開かれた宴席。
そこで玲は、芸名「さゆり」として働く一人の女性と出会う。
明るく、愛嬌があり、場を和ませる。
最初は、それだけの存在だった。
少なくとも、玲はそう思っていた。
けれど恋を知らない男は、人を好きになる順番も知らない。
ある日、彼女の意外な一面を目の当たりにした玲は気づく。
芸名しか知らない。
本名も知らない。
年齢も知らない。
それでも、自分の人生に必要なのは彼女しかいないと。
――そして何より。
『さゆり』こと長谷川結花本人だけが、その想いを知らない。
一方の結花は、奨学金とアルバイトで大学へ通い、就職活動に悩みながらも前を向く、ごく普通の女子大生。
仕事で会うたび、優しく頼りになる玲へ少しずつ惹かれていく。
好きなら、好きと言ってほしい。
特別なら、特別だと教えてほしい。
けれど玲は、一番大切な言葉だけを口にできない。
好きなのに、好きと言えない。
恋を知らない男と、普通の恋がしたい女。
同じ相手を想いながら、何度もすれ違い、何度も遠回りする。
これは恋を知らなかった男が、たった一人だけは失えない男になるまでの物語。
※年の差/社会人×大学生/じれじれ/ハッピーエンド/執着愛