「お前の『記録』など、ゴミ同然だ。この聖女の光こそが国を救うのだ!」
代々王家の記録官を務める公爵家の娘、エルセ。彼女の持つ固有スキル『万象記す(アーカイバー)』は、ただ見たものを書き留めるだけの無能な力だと蔑まれていた。
婚約者である第一王子に裏切られ、泥濘の中へと追放された彼女を拾い上げたのは、冷徹な「氷の獅子」と恐れられる第二王子・ジークヴァルトだった。
「ようやく手に入れたぞ。……エルセ、君が書いたことは、全て『真実』になるんだろう?」
実は彼女の力は、事象を固定し、過去さえも再定義する「管理者の権能」だったのだ。
彼女がペンを置いた瞬間、王国の魔法陣は沈黙し、国庫は空になり、偽りの聖女のメッキは剥がれ落ちる。
一方、エルセはジークヴァルトの腕の中で、甘く、重く、狂おしいほどの独占欲に晒されていた。
「君が『私は幸せだ』と書けば、それは絶対の真実になる。……さあ、私との愛の記録を始めようか」
これは、全てを失った令嬢が、自分だけのペンで最高のハッピーエンドを書き換えていく物語。