※この作品は『結婚と算盤~新妻の百貨店経営奮闘記~』の一編です※
博多の古い商家・太田家の三女、奈江(なえ)
父の「いちばん良か商い」の一言で、東京の財閥・岸田家へ嫁ぐことになる。
相手は十五歳年上の当主・岸田朔之介
――けれど祝言の席で、新郎の座布団は空いていた。夫の顔すら知らぬまま、奈江の東京での生活が始まる。
嫁ぎ先で与えられたのは、銀座の巨大百貨店「幾志屋百貨店」。
名目上は社長。
だが支配人たちは「奥さまがお仕事をなさることなどございません」と丁重に遠ざけ、奈江は、ただ淡々と日々を消費していく。
退屈に耐えきれなくなった奈江は、下女の梅とこっそり百貨店へ。回転扉の向こうの香水の匂い、舶来小物のきらめき、食堂から見下ろす東京の街
――その眩しさに、自分は「お飾り」などではない!
と、奈江の商家の娘として培った勘と帳場の血が沸き立った。
結婚を「商い」にされた花嫁が、商いで自分の居場所を作り上げていく――文明開化の匂いが渦巻く大正東京を舞台にした、お仕事×恋(予定)×成り上がりラブコメ。