前世は女性検事。今の私は、抱っこされるとつい服をつかんでしまう、三歳の王子。
夢をきっかけに思い出したのは、自分の前世と、偶然一冊だけ読んだライトノベルだった。この世界で私は、いずれ婚約者の公爵令嬢を大勢の前で断罪することになるらしい。
けれど、お茶会で出会った彼女は、物語に書かれていた「悪役令嬢」とは少し違う。きちんと振る舞おうと背筋を伸ばしながら、差し出してくれた小さな手は、私と同じように緊張していた。
特別な力はない。前世の経験があっても、幼い口は回らないし、誰かの気持ちを勝手に分かったことにはできない。だから、まずは目の前の彼女の声を聞いてみようと思う。
女として生きた記憶と、男の子として育つ毎日。家族に甘え、ときには彼女にも助けられながら重ねる時間は、やがて互いを見る目も変えていく。
断罪する役を与えられた王子と、悪役と呼ばれるはずの令嬢。二人はどんな大人になり、どんな関係を選ぶのか。
幼い出会いから始まる、成長と信頼の異世界恋愛。