この街は、壊れかけている。
冒険者が増え、力の強い者が正しい顔をし始めた。
止められる大人はいない。止めようとすれば、次に壊されるのは自分だ。
それでも毎回、騒ぎは“終わる”。
気づけばB級冒険者が倒れていて、木の棒を持った十歳が淡々と片付けている。
英雄なのに称賛されず、むしろ遠巻きにされる少年――ムサシ。
「宮本武蔵がいるらしい」
そんな噂を聞きつけた転生者の三人が、この街に足を向けた。
伝説の剣豪か、ただの異常な子供か。どちらでもいい。確かめる価値だけはある。
夕暮れの市場。少女の声が響く。人々が笑う。
その平和は、酒臭い怒鳴り声で一瞬にして潰れた。
木箱が蹴られ、テントが傾き、十歳の売り子が震える。
そして――輪の外から、小さな少年が歩いてくる。