『約束、矜持、恋心……邪魔者たちを乗り越えて、全部守りきってやりましょう!』
伯爵令嬢のイスカナディアは図書館で暮らしている。
その図書館暮らしを楽しんで満喫してはいるものの、この状況に不満がないわけではない。
というのも、母亡き後に父が連れてきた後妻が、家で幅を利かせていて居場所がないからだ。
それでも妹のサラや、従者エフェなどと仲良くやっているし、司書の仕事を手伝うのは楽しいしで、そこまで生活には困っていない。
しかし、本来の正統後継者であるイスカナディアとしては、古きに王家と密約を交わし、知識と歴史を見守ってきた賢者の家系が、入り婿の父と後妻に好き勝手されてしまっている状態には思うことある。
なので表は大人しく裏で色々しながら日々を過ごしていた。
ある日、司書仕事をしていると、ライブラリア同様に古き密約を王家と交わして国を支えているティベリアム公爵家の当主ケルシルトと出会う。
その出会いをキッカケにイスカナディアは、ライブラリア家だけでなく、ケルシルトのティベリウム家、そして王家の密約三同盟を敵視する過激派がいることを知る。
ライブラリア家の問題、過激派の問題。
それらを片付ける為に提案されたのは、ケルシルトとの婚約を大々的に発表するという婚約式。婚約式後にネタばらしされる予定の偽の婚約式ではあるのだが、準備しているうちにイスカナディアは自然と、偽装だけで終わらせたくないと思うようになっていく。
古い密約、色んな人との約束、己と矜持と貴族の矜持。
これはーー大切なモノを守ろうとする者たちの約束と矜持を巡る幻想譚。