彼に与えられたのは、膨大な魔力と――地球上に存在したあらゆる物品、機械、車両、兵器、工場、医療機器、農業施設、通信機器、鉄道、そして様々なテクノロジーを召喚できる規格外の能力だった。
しかし、サクヤが最初の地に選んだのは、王国でも街でもなかった。
そこは世界の中心から遥か遠くに位置し、いかなる地図にもまともに記されていない群島だった。
人間の王国はない。
街もない。
港もない。
文明もない。
そこにあるのは、魔物とダンジョンだけ。
総面積約41万平方キロメートルに及ぶその群島は、完全なる未開の地だった。
文明の痕跡はなく、支配者もおらず、人間さえ一人もいない。
「……ここなら、誰にも邪魔されずに生きられるかもしれないな」
サクヤはたった一人で、その島の開拓を始めた。
鉱山。
発電所。
工場。
農場。
港。
家。
そして、鉄道。
最初はすべてが自動化されていた。
人間が誰一人いない、静寂の中での開拓。
だがある日、サクヤは奴隷貿易から救い出された少女たちと出会う。
家族に見捨てられた少女。
社会的地位を失った少女。
まともな教育を受ける機会さえ与えられなかった少女。
彼女たちには、生きる場所さえなかった。
サクヤは彼女たちに居場所を与えた。
しかし、彼女たちはただ保護されるだけの存在では終わらなかった。
彼女たちは学び、働き、組織を作り上げた。
魔法、工学、医学、商業、軍事、行政、教育、そして地球から召喚されたテクノロジーを吸収していった。
やがて少女たちは、アステラにかつてないほどの巨大企業と秘密組織を創り上げていく。
表の顔は――企業。
その真の姿は――暗躍する秘密組織。
昼の彼女たちは、商人、技術者、研究者、農家、行政官、そして鉄道員。
夜の彼女たちは、情報員、兵士、研究者、そして特殊作戦要員。
そしてサクヤの預かり知らぬところで、最初は帰る場所のない人々を守るためだけに作られた組織が、次第に国家をも動かすほどの勢力へと成長していく。
「俺はただ、静かに暮らしたかっただけなのに……」
「総帥(陛下)。我が方の鉄道網が、ついに中央大陸まで繋がりました」
「……どうして?」
これは、何もなかった群島から始まる文明開拓の物語。
居場所を失った転生者と少女たちが、共に紡ぎ出す――
異世界文明興隆の時代。