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両腕のない王子として生まれた少年は、祝福されることなく、ガラクタとして国境の森に捨てられた。
吐き捨てられた言葉を名として背負った少年、アトカ。
元冒険者夫婦に拾われ、アッシュフォード家の子として育った彼は、血ではなく愛情によって家族を得た。
優しい父と母。自慢の兄ルト。そして、いつか学園で再会し、自分の成長を見せるという大切な約束。
だが、アトカには普通の魔術が使えなかった。
杖も、詠唱も、術式計算も、彼の力を正しく導くことはできない。
両腕を持たずに生まれた彼の魔力は、外へ放たれる方向を見失い、従来の魔術の型から大きく外れていた。
そんなアトカを鍛え上げたのは、世界最高峰の魔女キルウェスタ。
彼女の苛烈な指導の中で、アトカは義手を自らの身体として受け入れ、空間そのものと同調する異質な魔術を身につけていく。
それは、世界でも数えるほどしか到達者のいない同調位階。
アトカの魔術は、彼だけの水と霧の魔術だった。
十歳になったアトカは、兄との約束を胸に、王立エルシオン学園へ入学する。
そこで彼は、普通では測れない者たちが集められた特等枠へ迎え入れられる。
泣くだけで人を壊しかねない治癒の少女。
魔術を喰らう飢えた少年。
数式に取り憑かれた天才。
触れるものを爆ぜさせる孤独な少年。
三秒先に罠を置く静かな先輩。
欠けた者、壊れた者、異質な者たちと出会いながら、アトカは学園で少しずつ自分の居場所を作っていく。
これは、欠けた少年が、欠けたまま立ち上がる物語。
そして、怪物ではなく魔術師として、誰かの隣に立つ物語。