俺、相沢ハル。二十歳の大学生。
趣味は、推しVtuberたちの配信を毎晩見ること。
――ある日、気づいてしまった。
お嬢様Vtuberが語る「お兄様」のエピソードが、全部俺のことだと。
推しの正体は、毎朝「兄貴に関係ないし」と言ってくる妹だった。
しかも、うちの家にはなぜか防音室が五つある。
夜八時になると、家族全員が一斉に部屋へ消えていく。
父も、母も、姉も、祖母も……まさか、全員?
さらに、毎朝起こしに来る幼なじみ、バイト先の鬼の店長、サークルの後輩、行きつけのカフェの店員さんまで――
みんなの配信に出てくる「Aくん」って、どう考えても俺のことじゃないか?
でも、家族は全員お互いの正体を隠しているし、俺が知っていることも誰も知らない。
だから俺は決めた。「何も知らなかったことにする」と。
正体には気づくのに、好意にはまったく気づかない鈍感リスナーと、
彼の話ばかり配信してしまうVtuberたちが繰り広げる、すれ違いだらけのラブコメディ。
掲示板の住民だけが、全部わかっている。