王太子から、舞踏会の場で婚約破棄を告げられた公爵令嬢アリア。
理由は「愛する平民女性を選んだから」。
――それ自体は、よくある話だった。
だが彼女は、泣かなかった。
なぜならその婚約は、恋ではなく「条約の担保」だったからだ。
婚約破棄は、個人の問題では終わらない。
それは同時に、穀物・港湾・傭兵に関わる国家間条約の失効を意味していた。
感情で選んだ王太子。
契約で世界を見ていた令嬢。
王国が混乱に陥る中、アリアは静かに王宮を去る。
王国の外で、契約主体として生きるために。
港湾都市、商会、宗教国家、契約絶対主義国家――
彼女を求める声は増えていくが、どれも安全で、どれも自由がない。
「信用は、国に属するものではありません。人に積み上がるものです」
婚約破棄から始まるのは、復讐ではない。
国家信用を巡る、静かな経済戦争。
これは、
愛を選ばなかった令嬢が、世界の“席”を選び直す物語。