人間界で最高のスキル研究者と呼ばれていたアルトは、王国によって研究成果を奪われた末に追放された。
彼が生み出した数々のスキルは貴族や騎士たちの功績として語られ、創造者であるアルトの名前だけが歴史から消された。
行き場を失ったアルトが辿り着いたのは、人類の敵と呼ばれる魔界だった。
そこで彼は小さな店を開く。
その名も――《魔界スキル商店》。
この世界で唯一、スキルを創造できる彼の店には、今日も様々な魔族が訪れる。
「もっと強くなりたいゴブリン」
「仲間を守りたいオーガ」
「人気者になりたいサキュバス」
「勇者に勝ちたい魔王」
願いに応じてスキルを売るアルト。
だが、スキルには必ず適性があり、使い方を誤れば望んだ未来とは違う結果を招くこともある。
成功する者。
破滅する者。
その全ては客自身の選択だった。
一方で、人間界では異変が起きていた。
かつて弱小だった魔族たちが次々と力を得て勢力を拡大していたのだ。
誰も知らない。
その裏で、一人のスキル職人が静かに店を営んでいることを。
そしてアルト自身もまた、客にスキルを与えるたびに失われた研究の真実へ近づいていく。
これは願いを叶えるスキルを売る男と、その店を訪れる魔族たちが紡ぐ、少し不思議な魔界繁盛記である。