「―――親不孝な娘を、どうかお許しください」
ある晩、ミッテルハム王国に属するシュヴァルツァー伯爵家の長女、クリスタ・シュヴァルツァーが自室から飛び降りた。
王太子妃の内定が知らされる矢先のことだったらしい。
残された者たちはみな、クリスタ嬢の死を悼み、その喪失を惜しんだ。
王太子殿下は彼女の死を信じきれずに未だ探し続けているという。
いやいやいや、ちょっと待ってくださいよ。
その伯爵家のお嬢さん、俺の家にいるんですけど―――!?
困るよ……。俺、おまえのこと好きなんだけど……。
あっさりさっぱり、だけど一途な頭脳派伯爵令嬢と、どうしておまえは気づかないんだ鈍感……ヒロインが大切で仕方ない平民魔法使いの、特大にすれ違う、一つ屋根の下の幼馴染のおはなし。