俺は犬である。名前はない。
けれど使命はある。この世界に転生する時、体を与えてくれた大天使様から「世界を救って」と頼まれたのだ。
…なら、人間に転生した方が良かったのでは?
そう思ったけど、犬の姿も悪くない。平日に寝転んでいても、井戸端会議に聞き耳を立てても怒られない。
その話を聞いていると、”異世界に繋がるゲート”があるらしい。尻尾をフリフリ向かってみると…警備員に摘まみ出されてしまった。
犬はダメ?やっぱ犬って、不便かも。
でも、諦めない。俺は別のゲートを探し、突撃する。すると…いきなりゴブリンに追いかけられた。ワニにも食われそうになるし、獲物も捕まらず散々な目に。
異世界は過酷だ。野良の俺では、余計にそう思う。
思うが、前を向く。草原を駆け、魔物と戦い、レベルアップして肉を食う。
気付けば俺は、有名犬になっていた。拍手喝采、手を振られる。
でもね。俺、まだ名前が無いんだけど…?