星灯祭の夜、王太子から婚約破棄と断罪を言い渡された公爵令嬢リディアは、その瞬間に前世の「修復師」としての感覚を取り戻す。王都に残れば消費されるだけだと悟った彼女が逃げ込んだ先は、母の縁が残る北辺の灰冠城《グレイヴォール》。そこは水も食糧も人心も足りず、壊れていることが日常になってしまった辺境の城塞都市だった。
リディアは水塔、工房、温室、診療室、学校、帳簿、孤児舎と、目の前の綻びを一つずつ直しながら、「直す」とは物を元に戻すだけではなく、人が次も暮らせる仕組みを用意することだと証明していく。やがて冷徹と噂される辺境伯レオンハルトとの契約婚約は本物の信頼へ変わり、王都に作られた虚構の聖女像も崩れ、灰冠城のやり方は一つの辺境の成功例を超えて王国全体の再建へと広がっていく。