この世界では誰もが一つだけ、なんらかのしょぼい魔法を持って生まれてくる。
そんな世界に生まれて十六年、ネアという少女に与えられた役割は──禁呪の生贄だった。
それは命と引き換えに、他者を若返らせるというもの。
けれどその時に出会ったのは、強大なのに使い手はおらず、ただ孤独に世界を彷徨っていた魔剣。
偶然の出会いが、少女を魔剣の主へと変える。
賑やかな街の喧騒。裏で蠢く密輸商人。女神と魔神をめぐる宗教の影。
そして人も魔物も敵になり得る世界で、少女は一歩ずつ力をつけていく。
「あなたは、わたしのもの。わたしは、あなたのもの」
甘くてどこか重たい魔剣の声に導かれ、ネアは小さい村から広い世界へ踏み出す。
これは生贄にされるはずだった少女の、ちょっと不穏で賑やかな成り上がりの物語。