候補者は五人。
王太子妃に選ばれるのは、たった一人。
――しかしその一人は、【花嫁試験】が始まる前から決まっていた。
伯爵令嬢ヴィオラは、一年にわたり王家の【花嫁試験】に励んできた。
水路の計画、資材の調達、関係者との交渉……だが、五人の候補者が月日を掛けて手掛けた仕事からは名前が消され、功績は王太子のものとして発表された。
しかも、既に王太子の結婚相手は決まっており、来年からは五人全員を妃付きの無給補佐にする予定だという。
王家の【花嫁試験】は、見せ掛けだけの出来レースだった。
真実を知ったヴィオラは、恋敵だった四人を初めて私的なお茶会へ招く。
そこで分かったのは、競い合っていたはずの自分達が、知らない内に互いの仕事を支え合っていたという事実だった。
「王家の【花嫁試験】は、全員で辞退いたします」
設計、魔法具、調達、会計、交渉。
それぞれの得意分野を持ち寄り、五人が立ち上げたのは会社――【五花商会】。
壊れた給水設備を直し、初めてのお給料を受け取り、自分達の名前に「ありがとう」が届く。
無償で呼び戻そうとする王太子には、正式な依頼窓口をご案内。
一方、ヴィオラの働きを知る外交官ヘルメスからも、個人的なお誘いが掛かる。
次の仕事の相談だと思っていたヴィオラだったが、彼が望んでいたのは、休日に二人でお茶を飲むことだった――。
王家の花嫁を辞退した五人が、自分の望むままに働き、笑い、幸せを選ぶ。
女性同士の友情とお仕事、そしてゆっくり育つ恋の物語。