諸行無常の混沌の世にて――
弱き者、罪なき者は虐げられ、欲に溺れた愚か者たちによって、美しき緑の大地は赤き哀しみの血に染まる。
その時、大いなる怒りと哀しみが世界の理の壁を打ち破り、
大空を貫く亀裂が走る。
そこより現れしは、漆黒の大いなる巨神。
大気を切り裂き、堅き大地を砕き、広大なる海すら呑み込む。
居並ぶ無数の兵は、瞬く間に蹂躙され、漆黒の闇へと引きずり込まれるのだという――
神の血を引く者であれ、我が物顔の大魔獣であれ、違いはない。
【深淵】の前においては、すべて等しく塵と化し、やがて無へと帰す。
あらゆる暴力を、争いを、無益な殺生を――
【深淵】より現れし破壊の巨神が打ち砕く。
この世界の悪しきすべてを滅ぼし、次なる創造の礎とするために。
その荒神を、人々は恐れと敬意をもって呼ぶ。
――【深淵の破壊神】と。
かつて混沌に満ちた血塗られた大地から悪を一掃し、
新たな世界の創造と引き換えに永劫の眠りについた荒神が――
今、再び。
醜き争い渦巻く混沌の中で、
数千年にも及ぶ長き眠りより、ついに目覚める。
……と、まあ。
ここいらじゃ、そんな伝説があるらしいんだけど。
いや、違う違う。
ちょっと待って。俺は普通の一般人だから。
え?蜘蛛?グリフォン?八咫烏?
いやいやいや、全部偶然。たまたまだから。
俺が【深淵の破壊神】?
そんなわけないでしょ。
――って、本気で思ってた時期もあったなあ……(遠い目)
気づいたら異世界にいて、
気づいたら神様扱いされて、
気づいたら悪党どもを蹂躙してただけの話。
まあ……ゆるい放浪記、みたいなもんです。
気楽に、ちょっとだけでも読んでもらえたら嬉しいかな――なんて。
私、主人公の柴龍太郎。通称・龍ちゃんが、そう思っております。
どうぞよろしく。……知らんけど。