「あなた、また勝ったわね」
「ああ、俺の実力だ」
──いいえ。全部わたしが、盤の外で片付けておいたの。
政略結婚で隣国へ嫁いだ令嬢アリシア。夫となったアルベルトは、優秀だが天才ではない。派手な武もなく、鮮やかな軍略もない。あるのは、まっとうな統治と、堅実な物量と、人柄の良さだけ。どこにでもいる、優秀なだけの凡人だった。
——ならば、足りないものは妻が補えばいい。
だが、世界は甘くなかった。愛する者を失って壊れた魔王フェリオル。国家を私物化する謀略家。血統だけを頼りに超大国を築く簒奪者。時代を動かす天才たちが、次々と牙を剥く。
それでも、大丈夫。アリシアは一度も戦場に立たない。名も顔も出さない。ただ盤の外から手を伸ばし、天才たちを一人ずつ、静かに詰ませていくだけ。
夫は今日も、自分の実力で勝ったと思っている。それでいい。
——これは、平凡な王と、盤外の妃。目立たない夫婦が、天才だらけの乱世を勝ち抜いていく物語。
(※アリシアは、まだ知らない。盤の外にはもう一人、彼女の掌が届かない相手がいることを。)
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