新章 あらすじ
俺の意識は、底知れぬ漆黒の渦へと沈んでいった。
遠くローマの街から、夜更けの重々しい鐘の音が静かに響き渡る。
時刻は――午前二時。
ティヴォリの冷たい地下暗渠の中、偉大なる画家であり、発明家であり、下町の冴えない名探偵であった男、レオナルド・ダ・ヴィンチは、その波乱に満ちた生涯に静かに幕を下ろしたのだった。
【プロローグ:午前二時に死んだ男は、二人いた】
午前二時。
ローマで一人、日本で一人。
まったく別の時代、まったく別の場所で、二人の男が同じ瞬間に死んだ。
片方は天才。
片方は社畜だ。
宗一郎の意識が、闇の底で何かに引っ張られた。
落ちる。
いや、滑る。
どこか別の、巨大な渦へ。
そして同じ頃。
ティヴォリの地下暗渠でも、一人の男が冷たくなっていた。
レオナルド・ダ・ヴィンチ。
画家であり、発明家であり、医術をも修める異才。
だが、彼が誰よりも強く自負し、矜持を抱く本業は――探偵だ。
彼の息が途絶え、二人の死が、ぴたりと重なる。
その瞬間。
世界のどこかで、見えない歯車が噛み合った。