老健を出たら、次は特別養護老人ホームでした。
まとめて入居してきた四人は、全員80代。
要介護4以上。生活保護。多床室。
介護記録上は「認知症による集団性作話」。
ただし――
本人たちは口を揃えてこう言う。
「俺たちは、かつて世界を救った勇者パーティだ」
勇者は導尿バッグ付き。
聖女は立位不可、関節リウマチで手指は変形。
賢者はパーキンソン症状で動作が遅く、
戦士は右半身麻痺でほぼ寝たきり。
周囲は全員、認知症だと思っている。
介護主任である“私”も、そう判断している。
否定しない。
訂正しない。
深掘りしない。
それが、認知症ケアとして正しいからだ。
夜勤は「見張り交代」。
リフト浴は「転送陣」。
カーテンは「結界」。
導尿バッグは「呪いの鎖」。
世界は救えないが、転倒は防ぐ。
魔王は倒さないが、オムツは替える。
これは、
世界を救った(かもしれない)英雄たちと、
今日も事故なく一日を終わらせる介護職の話。
コメディ多め、
でも対応は全部、現場的に正解です。