王立学園に通う男爵令嬢ロシーナ・カッセルは、土壌を読み解くことに長けた、少し風変わりな実務科の生徒。
その観察眼は、誰も気づかぬ地盤の異常すら見抜いてしまう。
——そしてその力は、完璧で揺るがないはずだった公爵令息ユリウス・フォン・ランベルトの世界に、静かな綻びを生じさせた。
盤上の戦略、学園での立場、そして本人すら気づかなかった感情。
彼女と関わるたび、ユリウスの中で、理屈では説明のつかない揺らぎが生まれていく。
ロシーナの存在は、少しずつ、しかし確実に彼の完璧を崩していく。
それは激しい変化ではなく、気づけば戻れなくなっているような、緩やかで静かなものだった。
しかしロシーナは知らない。
自分の家であるカッセル男爵家が、国家の最上位機密に関わる一族であることを。
そしてその力が、やがて国家の均衡すら揺るがすことになることを——。