空木
零(うつぎ
れい)、35歳。見た目が少し若い以外、何の取り柄もないしがない平社員。
彼の退屈で空虚な日常は、ある朝、目の前に現れたウィンドウによって終わりを告げる。
『貴方は【スキルを作るスキル】を授かりました』
手に入れたのは、文字通り「あらゆるスキル」を無限に創造できる、神の力。
だが、彼が抱いたのは世界征服や大富豪への野望ではなかった。
ただ一つ、純粋で底なしの知的好奇心。
「もし、全人類が魔法を使えたら?」
「もし、昨日とは違う歴史を歩んだら?」
疑問の答えを知るため、彼はスキルを世界にばら撒き、混沌と進化を観測し、飽きれば世界ごとリセットして次の実験を始める。
彼にとって、それは箱庭の蟻を観察するような、ただの趣味。
しかし、彼が“リセット”を繰り返す中で、消されたはずの世界の記憶を断片的に引き継ぐ者たち――「イレギュラー」が現れ始める。
彼らにとって、理由も分からず世界を弄び、絶望と再生を繰り返させる存在は、まさしく『人類悪』。
これは、歴史上最もタチが悪く、そして最も自覚のない邪神の物語。
真の悪とは、悪意から生まれるのか。それとも、完全なる無関心から生まれるのか。
一人の男の退屈しのぎが、無数の世界を絶望に染める、壮大な観測記録が今、始まる。