53歳、独身、無職。
母親の年金に頼り、六畳間の自室に引きこもる田中修一。
彼の人生は、そして田中家そのものは、自分の代で終わる。
―――滅亡。それが、彼に与えられた動かしようのない現実だった。
お盆の墓参りで、ご先祖様に「不甲斐ない最後の一人ですまない」と心で詫びたあの日。
彼の日常に変化が訪れる。
修一に授けられたのは、世界を救うような派手な力ではない。
植物や人間の「最も良く成長するための最適な条件(ポテンシャル)」が、ゲームの攻略情報のように見えてしまう、地味で、だけどとても優しいスキルだった。
枯れかけのハーブ、寂れたコミュニティ農園、そして不器用な人々。
滅亡するはずだった男が、その手で新たな命と繋がりを育んでいく。
これは、人生の終わり際から始まる、一人の男の切なくも温かい、リスタートの物語。
優しい奇跡に、どうか少しだけお付き合いください。
※「Caita」「カクヨム」でも掲載中。